顔まで似てきた彼女との生活

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出会った場所は大学の体育の授業、
初めて交わした言葉は「左の靴紐ほどけてるよ」
彼女の服装は青いユニクロのTシャツに
黒いアディダスのハーフパンツでした。

最初の出会いからはもう10年、
別れてからは3年経ちますし、
私はどちらかというと記憶力にあまり自信がない方の人間なのですが、
なぜかそのことは今でもよく覚えています。

私のことをよく知る地元の友人連中に彼女の写真を見せると
「これまでの女と全然タイプが違うじゃないか」
と決まってイジられたものですが、
自分としてはそこになんの意図もオチもなく、
ただただ自然に(お付き合いを申し出るときには
往々にして多少強引だったかなと思うこともありましたが)
全ては成り行きに従っていった結果だったので返答に困り、
よく「うん」でも「いいや」でもなく
「ああねぇ」といったようななまぬるい返事をしていたものです。

5年ほどお付き合いさせていただいた
その彼女との思い出の中には、
おもしろおかしく他人に伝えられる
ショートストーリー的エピソードのようなものは
これといってないのですが、
全体を通して「だんだん顔が似てくる」という
これまでにはないハプニングがあり、
お互い凡庸なルックスだった私たちにとって、
それは嬉しいような嘆かわしいような時間でした。

私は大学進学とともに上京し、
それからはずっと一人暮らしをしています。
まったく赤の他人同志の顔が少しずつ似ていく
科学的根拠はよくわかりませんが、
それまでのお付き合いから比べても
一つの部屋で同じ食事をし同じ過ごしかたを共有する割合が
格段に増えたことは間違いないので、
もしかすると一緒に居すぎたのかもしれないね、
などど、最近でも年に1回は会う中で冗談のようにそう繰り返しています。

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